6人が本棚に入れています
本棚に追加
「痣をつけたのは息子だ。親は息子の行為に気付いていない。この娘は二人からの攻撃に苦しんでいる」
「じゃあ、盗むしかないじゃん」
「あの娘を盗む。お前にできるか春樹」
うなずく。
できるかできないかは考えない。
俺は彼女に芸術で魅せたい。
アートという素晴らしい庭を素足で踏み出してほしいんだ。
「今回、いつも世話になっている獅子峰九郎巡査が本気を出していると、情報屋からのタレこみがあった」
獅子峰九郎巡査。
実力は凄まじいが、頭の悪さと器物破損の多さが災いして、いつまで経っても出世できない中年オヤジ。
手刀でコンクリート製の電柱を砕く化物だ。
「どうやら、暁光学園の十二師団を雇ったらしい」
「ま……マジ?」
「マジだ。だから、できるかと聞いたんだ」
暁光学園は俺たちが通っている教育施設。
そこに存在する十二師団という組織は、敵に回せば暁光町を滅ぼせるとまでいわれている。
確か、巡査の息子さんが元リーダー格だったっけ。
バスケ選手のような体格で、ハスキーボイスが若干混じってる快活な先輩だと記憶してるが、この先輩も馬鹿みたいに強いんだよな。
「……と、とりあえずやる?」
「ふふふ、そうか。読み通りだ! あらかじめイベントを用意してよかったよ!」
鶴吉は笑う。
さて、何を企んでいるのか。
いや、言ってくれるな。
わかる! この笑みは恐ろしい笑みだ。
「今日の夕方六時、暁光学園に挑戦状を描きに行く」
「ば、馬鹿野郎!! 死ににいくつもりか!」
「犯罪行為を今までしているんだ。いずれにせよ命懸けになってくれんと困る」
くそう。
とても厄介なことになったぞ。
もしかすると、前段階で計画が頓挫しちまうようなチャレンジをしようとしていると確信し、俺の身体が震えだした。
最初のコメントを投稿しよう!