雫の行方 ~ユキノツバサ~

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雫の行方 ~ユキノツバサ~

この息苦しい世界に、  何をするにしても、すぐさま呼吸困難に陥ってしまうようなこの世界に。  ――初めて。  透明な雪が、透明な音と共に降り注いだ。 「この雪を集めて翼にしたなら、こんな私でも空を飛べるのかしら。ほらちょうど、雪だるまを作るみたいに」  彼女は笑っていた。  マフラーを首に巻きながら、純白い吐息を羽のように広げて。 「とりあえず今は歩こうよ。光の導が示す方へ」  僕はそんなつまらないことしか言えなかったのにも関わらず、それでも彼女は笑っていた。 「空が飛べたなら、君を遠くまで連れていってあげられるのに」 「だからねえ、手を繋いでもいい?」 「……もう繋いでんだろ?」 「えへへ~」    光の導。暗い暗い道の休憩所。  彼女は不意に足を止めた。 「ねえ。  キスの味って、この雪に似てると思わない?」  ――〝まるでこの雪を集めたら、私が作られてしまうみたい〟  初めて聞いた声だった。  彼女の、その泣き崩れてしまった瓦礫の様な声は。image=490293736.jpg
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