4人が本棚に入れています
本棚に追加
雫の行方 ~ユキノツバサ~
この息苦しい世界に、
何をするにしても、すぐさま呼吸困難に陥ってしまうようなこの世界に。
――初めて。
透明な雪が、透明な音と共に降り注いだ。
「この雪を集めて翼にしたなら、こんな私でも空を飛べるのかしら。ほらちょうど、雪だるまを作るみたいに」
彼女は笑っていた。
マフラーを首に巻きながら、純白い吐息を羽のように広げて。
「とりあえず今は歩こうよ。光の導が示す方へ」
僕はそんなつまらないことしか言えなかったのにも関わらず、それでも彼女は笑っていた。
「空が飛べたなら、君を遠くまで連れていってあげられるのに」
「だからねえ、手を繋いでもいい?」
「……もう繋いでんだろ?」
「えへへ~」
光の導。暗い暗い道の休憩所。
彼女は不意に足を止めた。
「ねえ。
キスの味って、この雪に似てると思わない?」
――〝まるでこの雪を集めたら、私が作られてしまうみたい〟
初めて聞いた声だった。
彼女の、その泣き崩れてしまった瓦礫の様な声は。
最初のコメントを投稿しよう!