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樹々の雷鳴
信号――――雷鳴。
脳内――――電波。
人間の信号が微弱な電気なのだとすれば、樹々の信号はきっと、音の鳴らない雷ほどの――――。
尾のない猫は、言葉を詰まらせた。
何を言っていいのか分からなくなってしまったからだ。
一人で――――いや、一匹でしばらく考えていたのだけれど、しかしながら結局、〝雷ほどの〟に続く言葉を見つけ出せはしなかった。
猫は、ひげを震わせた。ああ、どうやら一番嫌いな天気――『銀河』が訪れるらしい。
ため息なのか、深呼吸なのか。
猫は自身のお腹が、いつの間にか音を鳴らしていることに、今更になって気付き、ハッと今立っている地面に、足跡を一つわざとらしく残してみた。
「音の鳴らない雷ほどの――――〝新世界〟だ」
満足そうな顔の猫は、
雷鳴の向こう側へと、おもむろに歩いて消えた。![image=490293739.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/490293739.jpg?width=800&format=jpg)
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