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真田さんが事も無げに答える。まあ不良の相手って言ったって実力行使とは限らないしな。すぐ暴力に頼るのは、脳筋蛮族の所業だもんね。きっと穏便に交渉して、ゲーセンから退場願うのだろう。
「瑞希ちゃんは、空手五段だ。そんじょそこらの馬の骨には負けんよ。不良なんかお茶の子さいさい木っ端微塵だ」
このおっさん、自分の失態を暴力で解決するつもりかよ。しかも人にやらせるって最低だな。脳筋蛮族どころか脳みそ腐葉土でできているのかと疑うレベルのど腐れっぷりである。
「いや、実力行使は最終手段ですよ。穏健に済ませるに越したことはないですし」
苦笑を浮かべつつ、真田さんが答える。真田さんが脳筋じゃなくてよかった。実力行使となると、俺まで巻き込まれる可能性あるし。武器が支給されるなら俺も戦うけど、徒手空拳となれば完全に管轄外だ。まあ、武器の使い方も知らないんだけど、基本的に振り回せばどうにかなるだろう。
それはさておき、話し合うにしても、手順を踏まなければ失敗に終わってしまうだろう。
言っても聞かない相手だからこそ、ヒーロー派遣会社に依頼するわけだし、話し合いが円滑に進む手立てを考えなければ、問題が余計にこじれてしまう。今日中に依頼をこなさなければ、うちの事務所は終わりだから慎重にいきたい。
真田さんにはなにか腹案があるだろうか?俺にできることなら、なんでも手伝いたいし。
「真田さん、何か考えある?」
「今の時点ではまだないわね。その不良のこと何も知らないし」
「それもそうだね」
たしかに今の話だけで案を出せというのも無茶である。今までの流れでわかったことといえば、今回の俺達は失敗の許されない命綱なしの綱渡り状態にあることと社長の性根が腐りきっているということくらいだし……。
ここにきてクソっぷりを更に露呈した社長だが、依頼を引き受けた張本人だし、今回の件に関しては俺達の中で一番この依頼に精通しているはずだ。ここは社長にも意見を言ってもらうほうがいいだろう。
「社長は何か意見がありますか?」
「え?あるわけがないだろう。だいたい、なんで私がそんなもの出さなければならんのだ?仕事をこなすのは君たちだぞ。私のことは責任者兼仕事の仲介人だと思ってくれたまえ」
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