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ダメだこいつ、もうどうにもならない。すでに手の施しようがないところまで逝っている。きょとんとした表情をしているのが、無性に腹立つ。というか責任者って自分で行っているけど、責任者の意味をわかっているのかもあやしい。
「社長……」
「ほら、外回りと事務職では仕事の内容が違うじゃない。余計なこと言って混乱させたらまずいかなぁと思っただけだよ」
「本当かよ……」
本当は楽して食べるご飯は美味しいなとか考えているんじゃないだろうかと疑ってしまうほどに、このおっさんは信用ならない。
それはともかく、案の定おっさんは何も考えていなかったし、これはかなり厳しいぞ。一番情報持っているやつが何一つ考えていない。まあ考えていたところで、このおっさんの案ってろくなものじゃなさそうだけど。
ならせめて情報だけでも出してもらうか。
「社長、依頼について聞きたいことがあるんですが……」
「うむ。なんでも聞いてくれ」
社長が大きく頷いた。やけに自信たっぷりだけど、ほんとうに大丈夫なのだろうか。事務所の責任者にこんなこと言うのも何だけど、心配だなぁ……。
「不良の名前と外見的特徴教えてもらってもいいですか?」
「私にもわからん」
「は?」
このおっさん、今とんでもないこと口走ったぞ。他所の仕事横取りしたくせに、仕事の内容についてはよく把握してないって最悪じゃねえか。つうか社会人として問題有りだろ、それ。
予想の斜め上を引く社長の発言に真田さんは面食らっていた。多分、俺も同じような顔をしていると思う。
「社長、わからないって言いました?」
「うむ。そもそも、ゲーセンの入場禁止時間になっても居座っている高校生がいれば、それが例の不良だとわかると思って特徴は聞いてこなかった。わからなければ、店長に聞けばいいし」
「それはそうですけど……」
まあ言っている事自体は間違っていないけど、分からなければ店長に聞けって、それは二度手間じゃないか?どうして仕事を引き受けた時に聞かなかったのって話になる。というか仕事を引き受けた以上、最低限必要な情報は得ておくべきだろう……。
「まあなんだ。依頼を円滑にこなすのに役立つ情報なら渡せる。中学時代の私の武勇伝とかな。不良十人相手に勇猛果敢に戦った時の話なら参考になると思うぞ。なにせ、この一件はイモータル鈴木こと、私の伝説の始まりだからな」
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