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「何処へでも行ってしまえ!!」
冷たい空気を裂いて叫び声は銃声のように響き渡った。
さっきまで降っていた雪はいつの間にか止んで、自分の声が突き抜けた灰色の空。
それでも落ちてくる雪は白かった。
この世界、あたしにとっての命の雪。
その雪が止んだんだ。
終わりを告げるにはちょうどいい。
「アレーシャ……」
ラマーンが眉をひそめてあたしを呼んだ。
痩せた体躯でそんな表情をするとますます頼り無げに見える男だ。
ラマーン。
あたしの所有物。
けれど、その証だったラマーンの首輪の鎖は千切れて、彼はそれを取り払おうともせず、森の中たった二人きりであたしと向かい合った。
「どうした? あたしの気が変わらないうちだぞ」
あたしは二度は叫ばないで低く言うと、右手に持った銃を、太い三つ編みを二つさげた自分の頭に向けた。
そんな顔をするんじゃないよ。
生きていくのに誰の顔色も確かめたことないんだ。
いまさら誰かに止められるとも思っちゃいない。
引き金ートリガーーを引く。
その数秒間に、いままでの出来事が、あたしとラマーンの間に溢れ返ってくる。
あたしはそれを幻に見て、
――不敵に笑みを浮かべたんだ。
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