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スノー・ファングという種族を知っている者は少ない。いまの終わらない冬が始まってから生まれた種族だからだ。
雪の女王が降らす雪の魔力が、獣と人の姿を合わせ持つあたしらをつくった。
だから、あたしらの命はきっとこの冬が終わりを告げるまでだと、仲間は皆口を揃えて言った。
いつ雪の女王の気が変わって『終わらない冬』が終るかわからない。
だからあたしらは、命以外は何ものにも縛られず好きに生きようと決めたんだ。
この雪の森を通る旅人から金目の物やら服まで剥ぎ取って、全て自分らの物にする。
自分らのためだけに。
あたしらはいつしかスノー・ファングではなく、山賊という集団で呼ばれていた。
群れでいるのは皆同じ考えだから。
あたしも大賛成だった。
あたし、アレーシャは山賊の親玉の娘として群れの中では特別だった。
仲間が何処からか奪い取ってきた宝でも、あたしが望めば全て手に入った。
あたしの住処である岩壁の洞窟には、それら沢山の宝の他に、森で捕まえた生き物たちを縄で繋いである。
鳩に兎に狐。
それからトナカイだっている。
みんなあたしの所有物。あたしのもの。
そいつらと遊んでやるのがあたしの日課だ。
「ほおら、鳴いてみせろ。跳ねてみせろっ」
縄を掛けた首にナイフの刃を当てれば、トナカイはあたしの言う通り鳴いてその場で暴れる。
「あっははは!」
みんなあたしのものだから。
みんな言うことをきくんだ。
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