snow fang

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  * * *  スノー・ファングという種族を知っている者は少ない。いまの終わらない冬が始まってから生まれた種族だからだ。  雪の女王が降らす雪の魔力が、獣と人の姿を合わせ持つあたしらをつくった。  だから、あたしらの命はきっとこの冬が終わりを告げるまでだと、仲間は皆口を揃えて言った。  いつ雪の女王の気が変わって『終わらない冬』が終るかわからない。  だからあたしらは、命以外は何ものにも縛られず好きに生きようと決めたんだ。  この雪の森を通る旅人から金目の物やら服まで剥ぎ取って、全て自分らの物にする。  自分らのためだけに。  あたしらはいつしかスノー・ファングではなく、山賊という集団で呼ばれていた。  群れでいるのは皆同じ考えだから。  あたしも大賛成だった。  あたし、アレーシャは山賊の親玉の娘として群れの中では特別だった。  仲間が何処からか奪い取ってきた宝でも、あたしが望めば全て手に入った。  あたしの住処である岩壁の洞窟には、それら沢山の宝の他に、森で捕まえた生き物たちを縄で繋いである。  鳩に兎に狐。  それからトナカイだっている。  みんなあたしの所有物。あたしのもの。  そいつらと遊んでやるのがあたしの日課だ。 「ほおら、鳴いてみせろ。跳ねてみせろっ」  縄を掛けた首にナイフの刃を当てれば、トナカイはあたしの言う通り鳴いてその場で暴れる。 「あっははは!」  みんなあたしのものだから。  みんな言うことをきくんだ。
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