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「お願い! はなして! こんなこと止めて!」
捕らえられていた娘が喚きだした。
屈強な肉体の男に捕まっている、それも山賊だというのに、その恐怖も知らないのか抵抗してくる。
その様子にあたしは訊いた。
「何でそんなに嫌がる? お前はあたしのものになるんだぞ?」
「私は早く行かなきゃいけないの。大切な人が雪の女王と一緒にいなくなったの。だから――カイを探しに行かなきゃいけないの! だからあなたのものなんてならない、早くはなして!」
あたしの言うことをまるで聞かない娘に、あたしはラマーンを思い出して苛々としていた。
「いなくなったのはお前のせいじゃないのか? 探すくらいなら、縄で縛ってなかったのか? 自分の側を離れないようにしつけなかったのか? そうじゃないなら自分のせいじゃないか」
「カ、カイは大切な友達よ!? そんな酷いことしないわ!」
「ひどい……?」
「カイがいなくなったのは、きっと別の理由があったからよ。それまでずっと一緒にいてくれたわ、ずっとよ。縄なんかで縛らなくてもカイは私の大切な友達でいてくれた」
訴えるように言った言葉が、あたしには上手く理解出来なかった。
娘があたしに言った。
「あなたはいままでそんなことをしてたの? だったらその縄に繋がれているのは、あなたの友達なんかじゃないわ。縄なんかで縛りつけても、ほどけた瞬間あなたは全てを失うもの!」
娘の姿が完全にラマーンと重なった。
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