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「タイちゃん
私、家をでたい」
せんじつ、道をたずねてきたロウバがサチの目の前でくるまにひかれたことから、そう言い出しました。
青年は少女をじっとみすえながら答えます。
「どうして?」
少女も答えました。
「タイちゃんを不幸にしたくない」
「大丈夫だよ」
「ほしょうはないでしょ
お願い
ゆるして」
「だめだよ
ずっと傍にいるっていったじゃないか」
黒い瞳が、いっしゅんだけ赤くそめられた気がしました。
しかし少女はそれにきずくこともなく、家をとびだしました。
サチは泣きました。
いくあてもなく。
頼れるひともいないからです。
ほんとうはタイちゃんの傍にいたいのです。
ですがそんなことは出来ません。
これまで少女は 一体なんにん人をころし、不幸にさせたでしょうか。
その犠牲にタイちゃんをいれたくありません。
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