第1話 腹の上の幼女

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愛生は多少興奮気味になり目を輝かせる。 「きゃはははは!!しゃべったぁぁぁ!!」 「うっせぇ!!聞こえんだろうがっ」 ハンバーガーチョップッ!! 「痛い痛い、いたーーーーい」 鼓膜を破壊されるかと思うほどの高い声に耳をキーンとさせられたが、ハンバーガーチョップを頭にお見舞いし黙らせる。両サイドにチョップをくらった愛生は、頭を抱えて床を転がって行った。 黒い球体は機械的に、無機質な声で何か理解不能な単語を言っていたが、カチリと何かが填まるような音がすると、球体は俺の手からいつの間にか消えていた。 「え?あれ?いつ消えたんだ?」 特に何か変化した様子はない。一体何だったのだろうか。 一周してきたであろう愛生が転がりながら俺に衝突すると、目を回して仰向けに大の字で寝ころんだ。 「ふにゃああぁぁ...目が、回る」 「アホ」 愛生を拾い上げて抱きかかえる。調査を再開しようと思い、動いていないエスカレーターを階段として上がってみるも、シャッターが閉まっており先には進めなかった。 再び、エスカレーターを下りて一階に戻る。 疲れてしまったのか、ついさっき眠りについてしまった愛生。ちゃんと寝かせるために、今日はとりあえず帰ることにした。再度見落としが無いか確認しながら出口を目指す。 食料も人影もない。俺たちしかいないこのデパートの様子を見る限り、この世界に何かが起こっているのは間違いない。もしこのアホが一緒でなく、俺一人しかいなかったなら、こんなに冷静でいられなかっただろう。 「家で寝かしたら、食料を探してやんないとな」 ついつい笑みがこぼれてしまった。愛生は落としてしまわぬようにとしっかりと抱きなおし、俺は外へ出た。
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