第2話  隣の黒髪ツインテール

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自転車のペダルを限界まで回し、体力ある限り進む。幻想を見たせいで少し時間をロスしてしまったが、このペースなら間に合う。自分でも驚くほど調子がいい。 現実逃避している時間はないのだ。現実を見つめろ。あれは現実ではあり得ない存在だ、幻想だ、無視だ無視。あんな夢を見たせいでおかしくなっているんだ。 駐輪場に自転車を投げ捨て、重い鞄を背負い教室まで走った。 「...間に合った」 時間は8時19分。席に着席すると同時にチャイムが鳴った。 なんて面倒な学校になってしまったのだろうと、呼吸を落ち着かせながらそう思った。もともと、ただの平凡な高校だったというのに...。 入学して早々、この高校はある人物によって改革が起こった。その人物は、現生徒会長であり、当時クラスメイトだった【霧桐冬馬】(キリギリトウマ)である。冬馬が風紀委員に所属してからわずか1年で、この高校を超進学校に変貌させてしまったんだ。 おかげで3年生は、エリートである下級生から邪魔者扱いだ。授業は3年生だけ当時の偏差値レベルなのだが、そういう下級生からの目や、厳しい校則についていけず辞めてしまった生徒も少なくはない。 俺もどちらかというと、規則正しい生徒ではない。しかし、ここで辞めた時の社会的ダメージや金銭的問題を考えると、踏ん張るしかないと思えた。 それに、処置として学費免除という優遇が与えられるのだ。一人暮らしの俺にとっては手放せないものだった。豚肉と牛肉の差は大きいのだよ学生には。 そんな事を考えていたら、授業が始まった。
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