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眠たくなるような1時間。
正確には50分。
「おいそこ寝んなよ」
ゆっくりと机に顔を沈めていく俺に、数学の先生は呆れた声でそう言った。
「止めるな、太陽は沈む」
そんな注意も届かない。
睡魔には勝てない。
そもそも、授業は個人のやり方を尊重し、校則で縛られていない。結果が全てのこの学校の、唯一の抜け穴なのだ。
「意味わからない事言ってないで起きろ...もう、有栖頼む」
「はーい」
【響谷有栖】(ヒビヤアリス)の声が聞こえた瞬間に、眠気がすぅーっと消えていく。
「わかった、起きます」
隣の席にいる有栖を見ると、書物を片手にこっちを見ていた。
なんと国語辞典。
「永久に眠らす気かっ」
「別に頭を殴るとは限らないじゃん」
いや、こいつは殴る...だって前回は殴ったからな。
「じゃあ何する気だったんだよ」
有栖を再度見てそう訊いてみると、有栖は人差し指を立てて一言。
「......刺す?」
なぜに疑問形?
「どっちにしろ痛そうだ」
俺は寝るのを止めて、授業を受けるフリを始めた。
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