第2話  隣の黒髪ツインテール

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昼食も終わり昼休みの時間を持て余していると、弁当箱をしまい終わった有栖がブリックパックのトマトジュースにストローを挿して、そのストローを噛みチューチュー飲みながらジロリとこちらを見ていた。 何故にコイツはトマトジュース飲む時ちょっと気性が荒くなるんだろうか。ストロー噛んでいる人初めて見た。 「アンタって本当にボッチなのね」 「うるせー、人の事言えんだろ」 「昼食終わったらほとんどボーッとして過ごしてるアンタと違って、私の場合自分の事で一杯一杯なの、アンタと違って」 「何故二回言った...」 トマトジュースを飲み終わり、カラになったパックを綺麗にたたむと、いつものように真空パックに入れ鞄にしまう。入れ替わるように鞄から無地の紅いカバーに包まれた書籍を取り出すと、栞から読み始める。 この瞬間だけ有栖は赤縁の眼鏡をかける。昼休みに現れる文学少女は先程とは違いかなり大人しい。 持て余している時間を、ボーッとして過ごすのはわりと嫌いじゃないのだが、確かに勿体無い気がする、と、密かに思っていると、有栖がもう一冊鞄から書籍を取り出す。 「暇なら...読めば?」 書籍からは目を離さず、右手だけがスッと伸びてくる。有栖から勧められるなんて...。 「...槍でも降るのか?」 「読まないならいい」 「んあ?いや、読むか」 珍しいし。 1ページ目を開くと、タイトルの文字が目に入る。 『俺の学園生活にラブコメが割り込めない』 どうやら、タイトルではそう言っているが内容は中々ラブコメしちゃっているようなラノベ小説を有栖は読んでいるみたいだった。 「それ...二巻か?」 「は?二巻って何でそんな事知って...」 暫くの沈黙がこの場の空気を凍てつかせていく。冷えて固まって動かなくなっていた有栖は、カクカクと壊れたオモチャのように動き出すと、再び鞄に手を入れ書籍を取り出した。 「それは冗談用、こっちが本物」 ふん、そんな引きつった笑顔では俺は誤魔化せないぜ。 「あっれーおっかしいなぁ冗談用なのに二巻を読んでるなんて」 「うっ...それは」 「俺とは違って自分の事で一杯一杯ですもんねぇ俺とは違って」 「うぅ...」 「面白い趣味をお持ちですな」 「...ふぇっ」 ふぇっ?
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