第2話  隣の黒髪ツインテール

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「ふぇっ、うっ、終わった...私もう学校来れない」 溢れ出した涙が、俯くと同時にひと粒、ふた粒とこぼれ落ちる。これは、マズイ。 周りの視線がこちらへと集まっていく。慌てた俺はこの場から逃げるべく、有栖の腕を掴み走り出した。 お互い一巻二巻とライトノベルを片手に、掴み掴まれの片手と腕は未だ離れずに、足は階段を駆け上がる。 授業開始まで残り10分というのに無計画にも程がある。泣き虫とは聞いていたが、泣かしてしまったのは初めてだ。 階段を上がるべくUターンを繰り返していると、ついに最上階に到着してしまい足が止まる。息切れするかと思ったが、呼吸も乱れず汗もそこまでかいていなかった。そこで思い出すように有栖の方へと振り返ると、有栖は咄嗟に視線を逸らす。 「わ、悪い...疲れたか?」 「...別に」 有栖の言う通り、疲れている様子はなく、汗ひとつかいていない。二階から四階までノンストップだったのだが、お互い体力がある方なのだろうか?不思議だ。 「そろそろ、手、離して」 「のあっ...悪い、つい」 手を離し二、三歩後退りする。そのまま、驚いたポーズのまま固まっていると、有栖は視線を合わせて手に持っていた書籍を両手で抱える。 「お願い、バラさないで」 沈んだような、感情のない声のトーン。そして今にもまた泣き出しそうな瞳を、上目遣いの瞳を、その紅い瞳を、俺の視線へとぶつけてくる。 「もしバレたら、私...」 「わかってる、言わな...」 「アンタを殺すから」 「墓場まで、いや、天国でも地獄でも来世でも言いませんとも」 そんな心臓に悪い言葉と鋭くなった視線が、俺の視線を吹き飛ばし脳天を貫通した。なんだか、相手から奪った武器が爆弾でしたみたいな、そんな感じだった。体験したことないけど。 「授業、始まっちゃう」 「お、おう」 「本、返して」 「んあ?いや、借りる」 「は?!」 「折角だからな、読むよ、面白いんだろ?二巻読んでんだから」 何と言っても、珍しいしな。 「槍でも降るの?」 「かもな」 「...こんな事初めてだわ、脅して引かない奴」 コイツはいったい何人の人を脅してきたんだろうか...。考えるだけでも恐ろしい。 「...よかった」 「ん?なんか言ったか?」 「別に」
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