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最初は警察に届ける事を考えたが、記憶喪失で身元不明でリトルダーク・バレット・ラヴトリガーなんていう名の幼女を、気付いたら家にいましたなんて言って連れて行ったって信じてもらえないだろう。
逆に怪しまれるに違いない。どうしたものか...。
「なぁ、ラヴって呼びづらいから日本人的な名前考えてもいいか?」
「のぶ代とか?」
「却下だ!ちなみに藤子も不二雄もその他さまざまな理由で却下だ」
「なぜわかった!?まさか心の声を聴ける...?」
不思議そうに俺の耳の中を覗くラヴをスルーし、何かないかと考えてみる。
「そうだなぁ、ラヴをそのまま変換するか」
ラヴを変換し愛にして、愛という漢字に生きるを足して愛生(あい)なんてどうだろうか。そんで俺の名字を足して雨宮愛生――――――。
「ってなに娘みたいに考えてんだああぁぁっぁぁ!!」
「パパ?」
「いや違うって」
耳元で言われるエンジェルボイスをはねのけ、なんとか自我を保つ。しかし、愛生というのは案外しっくりくるものがあった。
「名前さ、愛生なんてどうだ?ラヴと同じ意味なんだけど」
「うん!いいっ!!」
かなり気に入ってくれたみたいだ。とりあえずはこの名前でやり取りすることにしよう。
ぐぅーっと腹が鳴る愛生は、またご飯の事で頭がいっぱいになったのか、よだれが垂れ始める。
「ちょ、もうすぐでファミレスに着くからよだれ我慢しろよ、汚いから」
「私のよだれなのに?」
「いや、意味わからんからっ」
この道を抜け大通りに出たところに、よく行っていたファミレスがある。
「あ...れ...?」
はずだったんだけど。
記憶にあった風景とは少し違っていて、ファミレスがあったところには大きなデパートが建っていた。少し古かったこの大通りもかなり新しく綺麗になっており、まるで違う場所かと錯覚してしまいそうになる。
「いったい昨日の今日で何があったんだ?だって昨日までは...ちゃんと...あれ?昨日?」
昨日は...。
「嘘、だろ?」
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