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『ま、ゆっくり休んでろ。しばらくは病欠だな』
(んな訳ないか…)
「…ごめん、ジン」
『俺じゃなくてお前のファンに謝れ。家でブログでも更新してろ』
「帰ったらすぐする」
『あぁ、』
悔しくないかといわれれば、めちゃくちゃ悔しい。
だって、今回のカウントダウンライブ、誰よりも時間を割いて企画も考えて、衣装にまで意見言わせてもらっていたのに…。
ソロ部分では久しぶりにミュージカル風の演出をする予定で、何度もブログの話題にもしたのに。
少なくとも一週間は家で缶詰だ。
今日が12/30だから、31、1、2…
『あ、航也』
「、何?」
ぼんやりした頭で指折り日数を数えていれば、電話の向こうでジンがひらめいた、と小さい声でつぶやいた。
呼ばれて返事をすれば、一言。
『…看病してもらえば、初恋の子に』
「はぁっ?!」
『じゃ、家から出んなよ』
「おい!ジン!…って切りやがった、あいつ…!」
驚きのあまり背もたれから身体を勢い良く起こしたせいで、クラクラと目の前が揺れた。
タクシーの運転手は、ラジオに聞き入っているのか俺に注意を向ける気配はなし。
恐らく、俺がテレビに出てるやつだってことにも気付いていない。
いつもなら助かるけれど、今日に限っては嬉しいやら、悲しいやら、微妙な心境だ。
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