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少しだけ昔のこと。
まだ、あつかましい輝きが夜の世界を我が者顔で出しゃばっていなかった頃の、小さな小さな物語。
一人の少年がお使いを終え、暖かい晩ご飯と家族の待つ我が家へと帰ろうとしていた。
民家なんてのは当時まばらで、ざわざわと茂る藍な種々の中に、適当に作られた道が一本伸びているだけ。
普段は蛙やその餌達ががちゃがちゃじーじーげおげおと、耳障りなぐらいやかましいのだけれど、その時は不思議なぐらい音がなかった。
古本屋のハタキのように丸々成長したススキですら、身体を揺らしてカサカサと呟こうなどとはしなかった。
少年は心細さを胸に抱き、急ぎ足でひたすら道を進んだ。
途中、小石につまづいてよろめいたりすると、心臓がワッと膨れ上がるぐらい驚かされる。
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