16人が本棚に入れています
本棚に追加
片手に持った提灯は、巨大な蒼黒に対してあまりにも心細い。
早く帰らなければ、このまま真っ暗に包まれ、二度と抜け出せなくなってしまう。
不安が少年の足を、さらに急がせる。
ふとその時、前方に影が見えた。
深海のごとく蒼の混じった暗闇の中においても、その人影は周囲に交わることなく、くっきりとその存在を誇張していた。
頭が上下二つもあるかのような高いハットをかぶり、マントで身体を膨らませた影は、じっと少年の行く手に立ち、ピクリとも動かず待ち伏せている。
少年は止まらなかった。
戻ることもしなかった。
目の前に得体の知れない奴がいるのは分かってる。
でも、道はここしかない。
今来た道を引き返し、やっと越えてきた山道を再び上がるなんてもっての他。
最初のコメントを投稿しよう!