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  土が、ボコボコ盛り上がる。誰も気付かれない程度の小さな穴から、草の蔓が伸びていく。草の蔓は、数を増やしていく。他の蔓とガッチリ結び付いて、緑色の絨毯が出来上がっていく。 緑色の絨毯が出来上がると、蔓が人の影に入り込む。そこで、モソモソと蔓が檻のように組み込み始める。 土が、またボコボコ盛り上がる。盛り上がった土の山から、蟻が現れ出す。緑色の絨毯に入り込み、蔓で出来た檻に石を詰めて石壁を作り始める。蔓で出来た檻は、座り込んだ大人が入れる程の大きさ。その檻の内部に石壁が出来ると、蔓が伸びて人の首に巻き付き締め上げ出した。 無防備だった人達は、何事かと騒ごうとするも、首が締め上げられている為騒げない。喋れない、叫べない。蔓は、頑丈で引っ張りすぎると手を切る場合がある。まさにそれだろう。締め上げられている首に傷が出来て、血が出ている人もいる。蔓を伝い上(のぼ)って来た蟻は、その血を飲むように首についた傷に噛み付いた。 人は痛いと、痛みの原因である蔓を切ろうと藻掻く。然し、両手と両足は別の蔓が絡み付いて動きを封じられている。首を動かせば、傷が増える。傷が増えれば、血が出る。血が出れば、蟻が噛み付く。蟻は噛み付くと、傷口から体内に入ろうとする。体内に入れば、血管にも噛み付く。引きちぎろうとする。   ザシュッ。ゴトン。   『ザシュッ』という音は、首が胴体から引きちがれた音。『ゴトン』という音は、首が落ちた音。 緑色の絨毯に流れ込む真っ赤な血を飲むように絨毯が動く。蕾が現れて、真っ赤な血と同じ真っ赤な花が咲いていく。その花は、鋭い牙が生えていた。首があった箇所を咀嚼しながら食べていく。 その光景を、膜を張った中からリールは眺めていた。ただ、無感情な眼差しで。  
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