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  次に、穴が開いて。踏み出した瞬間、その人は消失した。また、誰かになるのか。 穴が開いた場所は、薄くて白に近い灰色に塗られた鳥居の上。鳥居から見下ろせば、鳥居があるのは崖の天辺。 崖の下は、彩り鮮やかな屋根が見える。十字路の河に沿って、黄金色の葉の樹が並ぶ。その樹の幹には、紐が巻かれてある。その紐の出所(でどころ)は、小さな船。どうやら、船が交通手段で河を行き来しているようだ。先程の人は、何処に潜んでいるのだろうか。 耳を澄ませば、賑わう声が聞こえる。騒いでいる声、喧嘩している声、誰かに叱られている声、何かを修理している音が、樹の合間を抜けて河を渡る風に乗って聞こえてくる。 十字路の河の奥。この鳥居の真正面に位置する場所に、山が見える。埋め込むように築城したのか、山の顔が城になっている。そんな風に思わせざるを得ない。近くで見たら、違うのかも知れないけれど。 城門には、船つき場が幾つかある。彩り鮮やかな屋根とは違って、存在感ある美しい色をした城。彩り鮮やかな屋根は温暖系や寒冷系の色が多いのに対して、城は黒と白と無色透明の色を使っている。まるで、チェスのような色合い。 美しくも、何だか畏怖の念を禁じ得ない。 威圧感が漂い、敵や客を拒絶するような趣(おもむき)。出来れば近寄って見たいが、中には入りたくない。  
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