3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
老人が保護した赤子は、スクスク成長していく。
今日も、老人は森に入ると魔物を狩っては、牙と毛皮等を採取し肉を捌いてギルドや市場に売りに行く。その間、赤子は老人の孫が見張っている。
孫のリールは、祖父が保護した赤子を冷たく見据えて何かを待つように佇むだけ。扉を軽く小突く音が微かに聞こえると、その音がある方に足を向けて消える。
扉の少し前に現れると、扉にある覗き窓を覆う板をずらす。覗き窓から、果物や野菜が見えた。リールが扉を開けると、野菜が飛び込んで来る。それを受け止めれば、視界は野菜で埋まる。
「リール、赤ちゃんは?」
野菜を退かせば、目の前に学生服を着た少女がいた。
少女は、サラ。豪族の一人娘で、我が儘で、リールを勝手に下僕扱いしている。リールの祖父の前では、猫を被っている。
「香水が臭い。赤子に、嫌われるよ。」
野菜と果物は、少し萎れている。
「チッ。」
厭そうな表現で舌打ち。
そんな彼女を、彼は無視した。相手にすれば、図に乗る。外へ出そうと、サラの後方を指差す。
「帰れ。明日来るだろ、赤子を引き取りに。」
サラは首を傾げた。
「引き取る?何の話。」
彼女は、自分の知らない話をされるのを嫌う。
「赤子に魔力が封印されていた。封印を解放すれば、街一番の魔力量になる。取引は、既に成立している。明日、君の親が引き取りに来るんだ。だから、明日からは赤子は君の弟になる。おめでとう、サラ。」
彼女は、顔を赤く染める。
それは、照れではなく怒り。彼女に断りもなく決まってしまった話が、許せなかった。リールは、知っていた。それも、許せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!