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  してやったり。 リールは、踞りながらも、痛みに耐えながらも、心の中では、この状況と結果に満足していた。 サラは、自分が中心の話以外は必ず怒る。そして、問答は無用とばかりに魔法を放つ。相手が怪我したって構わない。親の力で、捩じ伏せれるから。 リールは、考えた。サラの格を落とす策を。取引を白紙にしたら、一人娘と言えども容赦ないだろう。そう考えた。祖父が赤子を拾って来た時、その赤子は実は魔力が封印されていると知った時、これを逃す手はないと思った。 リールや祖父が暮らす街は、他国と取引をしている。街を衛(まも)ってくれる代わりに魔力の多い子供を差し出そう。国からしたら、魔力の多い子供は特に戦力になる。幼い頃から育成すれば、成長する度に強さも増せば、素晴らしい戦力になる。サラの親も、他国との取引に関与している。数年は、森で狩りをしなくても暮らせる額が貰える。 祖父とサラの親は、赤子の件で話し合い取引を成立した。お茶を持って来た時に、聞き耳を立てて聞いたから確かな話だ。その話をサラに言わなかった。サラの親も、赤子の事を言わなかった。言わなくても理解してくれるだろう、という家族間の暗黙の了解に双方は頼っていた。 娘が我が儘で自分が中心の話でなければ、攻撃的に相手をいたぶる性格である事を知らない父親。父親の力で、自分が引き起こした問題を捩じ伏せる娘。互いが、互いに知らせずにいた結果。それを他人のリールは、熟知していた。 大人は、みんな、思い込む。リールも、そう思い込んでいた。
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