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  何処の国も、街も、みんな同じ。 金に目が眩(くら)んで、子供を置いてきぼりにする。子供は、道具。取引の為の道具でしかない。大人になっても、道具から卒業しても、大人と同じ考えに至る。永遠に、子供は街を衛る為の道具でしかない。 それが良く判った。大人に言ったところで、意味がない。ギルドも、国も、街も、大人も、魔力の多い子供は道具。魔力の少ない子供は学力を上げなければ、捨てられる。捨てられた子供は、森で魔物に襲われても誰も助けに来ない。人間扱いされない。家畜よりも酷い扱い。そういう劣悪な環境の中、リールはラッキーな子供だ。 風を遮(さえぎ)る壁や光を注ぐ窓がある家、寒さを凌(しの)ぐ毛布、暑さを凌ぐ床、雨を遮る屋根。何れもない家もあれば、ある家もある。 大人だけが贅沢で、道具でしかない子供は玩具で、道具にもならない子供は家畜か人形。   この世界は、削除後に復元または再生しても堂々巡りなら、不要でしかない。 治療を終えたリールは、壁に背を預ける。深呼吸を繰り返す。街の人達は、サラを見る。冷たい眼差しで。祖父は、未だに取引に夢中。赤子は眠っている。誰も、リールを見ない。怪我をした子供は、道具でない限り、人間扱いされない。壊れた人形は、壊れた箇所を直せば良い。気遣う人もいない中、彼は誰にも気付かれないように魔力を練り、自分に膜を張った。  
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