第1章

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「遅くなりました、すいません」 「いや、丁度良かったよ」  御形が抱えている、モココに目が行った。 「モココ?」 「勝手に車に乗せていました。海を散歩させてきました」  苦しい言い訳だったが、御形の父は、遠野家に挨拶をすると車に乗り込んだ。 「どこから連れてきたのだい。それとも、モココ、飛んできましたか?まあ、いいでしょう」  それ以上の追及がなくて良かった。  でも、正直に海に行ってから、泣き声のする洞窟に偶然行ってしまい、モココに助けられて成仏させた経緯を話した。 「そう、大変だったね。人間は、業が深いね」  もう一つ、奥ノ院から感じた、中学生くらいの少年は何だろうか?御形が、持ってきていたパソコンで調べ初めていた。 「家出があるね…昔ではない、最近のことだけど」  霊感はないので、最近なのか昔なのかも判断がつかない。  御形があれこれ説明してくれたが、俺は力を使い過ぎた。凄く眠い。後部座席で、爆睡してしまっていた。  夜、直哉に状況を説明していると、蓮から電話が掛かってきた。  週末に問題の土地に行くので、一緒にどうかという問い合わせだった。直哉には、サッカーの練習があるが、今度の土日は自首練習となったらしい。直哉と一緒に行くと告げると、御形はどうかな?と珍しく蓮が聞いてきた。  確かに霊の見えない俺と直哉では、先行きがあやしい。 「御形か…」  お目付け役という感がある。 「行くよ」  どこから聞いていたのか、御形がドアから顔を出していた。 「どこで聞いていた?」  いつも、タイミングが良すぎる。 「たまたま、トイレに行っただけだ」  また、置いてゆくつもりだったなとか、過去の色々を御形が持ち出し愚痴っていた。御形が優れているというのは人間的にであって、人間よりやや離れている俺達から見ると、御形は守らなくてはいけない存在となる。守れる自信がないときは、安全な場所に置いていきたくなるのだ。  今回は、複雑になっているが、普通の霊が相手なので、どうにかなるかもしれない。しかも、人間相手ならば、御形のスマイルは役に立つ。御形も一緒に行く、で、決定した。  そして、この事件の攻略方法の検討会になってしまった。  まず、洞窟。迷宮であろうが、直哉が居る限り迷宮ではない。
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