第1章

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 CATEGORY HEAVEN (カテゴリー ヘブン) 第一章 海の祠  駅前にある、ガラス貼りのビルの一階に、占いの館と名前の付けられたコーナーがある。そこは占いの激戦区で、激戦区と呼ばれているために多くの人がやってくる。ここに店が出ているということは、人気がある、何故人気があるのか?よく当たるに違いない。そんな、図式があると皆に思われてきた。  確かに分野によっては当たるだろう、占いの館に店を出す春日 蓮(かすが れん)の占いでは、本物の天使が手伝っているのだから。  仕切られた一室、ビロードの赤いカーテンの中では、蝋燭の火が燃え、相談者が蓮に相談事を話している。カーテンの後ろに居るのは、俺、黒井 典史(くろい てんし)と、俺の従兄の雑賀 直哉(さいか なおや)だった。  俺は、霊能力者の家系に生まれながら、霊の類に対しては全く役立たずで、しかも、霊が見えないし聞こえない。それでも、霊能力者もやっているので、偽霊能力者、自称詐欺師だ。でも、本業は高校生。  直哉も、同じ高校のクラスメートで、同じ霊能力者の家系だが、霊感というものはない。  霊感は無いが、他の能力はある。俺は、母が霊能力者というマイナーな仕事を引き受ける代償?として天から貰った天使で、直哉も天人に近い。  故に普通じゃない能力を使う。占いの相談者に対して、俺は水を媒体に相談者の過去を見る、直哉は千里眼で現状を見ていた。  今日の蓮の服装は、黒いマントにフードだった。雰囲気が大切なのだそうなのだが、薄暗い中で、全身黒いとなるとまるで死神のようでもあった。 「あの、五年前に行方不明になった、孫を探しております」  相談者は、年配の女性だった、占いの館の雰囲気に馴染めないのか、首を傾げて周囲を見ては、立ち上がりかける。  相談する相手を間違ったと、後悔しているのかもしれない。  蓮は、相談者に合わせて対応するため、電気を付けた。蝋燭の火も消して、真面目に相談に乗るという態度を見せる。 「お若いのですね…」  蓮の本業は、大学生だった。生活費のため、俺達は日々働いている。  明らかに、相談者にがっかりされている。俺は、霧吹きで水を微かに飛ばすと、過去を見てみた。  学校の先生をしていた孫。中学生の教師だった、赴任先が遠くなり、家を出た。毎日のように連絡をくれた。
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