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海辺を歩いていると、幾つもの洞窟を見つけた。波の浸食で造られるもので、今は引き潮なので多く見えているのかもしれない。
その一つに、やはりコンクリートの祠のようなものが置かれているものがあった。引き潮の今でさえ、半分、海に沈んでいた。
『止まれ』の記号。何故、海の中にあるのだろう。近寄ってみて、違和感と既視感が同時にやってきた。
この祠は、穴の蓋のように感じる。そして、これは蓮の記憶にある祠と、同じように見える。異なる場所に、似ている祠。この祠が蓮の設置したものなら、前に見た祠は何だったのだろう。
「直哉…」
この中には、何があるのだろう。
「中に何がある?」
直哉が、祠の奥を透視する。
「当たりだ。俺、海が苦手だから千里眼でも無意識に海側には出なかったわけね…」
海が嫌いな直哉を浜に待機させ、俺と御形はジーンズをまくり、祠に近づいた。
祠に手を掛け、引っ張ってみたが、動く気配は無かった。かなり、強く押し込まれているようだった。
「黒井、リュックにバールが入っている」
リュックが重いと思っていたが、バールなんて入っていたのか。リュックから、バールを取り出すと、テコの原理で、祠を外してみた。
白骨。でも、人間のものと分かる。祠をどかすと、口径の小さな洞窟で、大人だったら体を折り曲げて押し込めないと入らないだろう。
「御形、この白骨の処理を頼む」
大量にある水を媒体に過去を見る。この白骨を運んだのは、音楽教師、田中だった。でも、殺人ではない、死体遺棄というやつだ。
蓮に電話を掛けると、深いため息が聞こえた。
「そうか、田中先生か…」
蓮の話によると、蓮達は、祠を設置して秘密を抱えた。抱えた秘密とは、祠は一時的に消え、他のものにすり替わった時期と、有働先生が行方不明になった時期が同一だった。
「仲間の誰かが、係っているのでは?互いに疑ってしまったよ」
仲間意識に溝が生まれた。
蓮は、有働家に連絡を行うと言って、電話を切った。俺は、灰を取り出すと、再び、白骨に向かった。
「御形、霊は居るか?」
「居ないよ」
居ないのか、それでは事情が聞けない。
「野島のほう探してくる」
一旦、蓮の祖母の家に戻り、到着して待っていた山上に、直哉が造った地図を見せた。
地図の×の位置に野島が居る。
「だいたいは分かった。後は、一番近い入り口だけど、やっぱり寺社だよね」
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