第1章

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 それが、連絡が突然来なくなり、失踪したとの連絡を受けた。  後ろから、見た過去のメモを蓮に渡すと、蓮からもメモがやってきた。 『女性の右横に立っている』  蓮がそれらしく、孫の情報を女性に確認すると、何も言っていないのに分かるものなのですか?と女性が驚いていた。  知っていると言うことをアピールして、次に起こる不思議なことを紛らわせる。不思議が一つ存在するならば、いくつ存在していてもおかしくはないという理論だ。  どこに居るのかは、本人に聞くのが一番早い。しかし、立っているのが俺に見えないということは、霊だ。少なくとも死んでいる。  俺は、灰を媒体に霊を実体化することができる。そっと、女性の横に灰を飛ばしてみたが、何も起こらなかった。  蓮が、カーテンを揺らす。揺らしている方向から察するに、俺が灰を飛ばした場所が違っている。蓮から、向かって右側らしい。  再び灰を飛ばすと、青年が浮かび上がってきた。 「優一!」  女性が抱き付こうとして、灰が飛ばされたのか消えてしまった。  再び灰を飛ばしてみたが、もうどこに居るのか分からない。蓮の指示を仰ごうと、カーテンの隙間から中を覗くと、蓮が茫然としていいた。  実体化した霊と、知り合いだったのか。 「有働先生ですか…」  蓮の顔が青冷めていた。仲間の過去を見ることは反則だ、やっていいことではない。再度霧吹きを飛ばし、今度は霊の過去を探す。  室内のどこかに霊がいる。  海の景色がチラチラと揺れていた。学校に向かう道の横に、海がいつもあった。挨拶をする学生が、自転車で追い抜いてゆく。晴れた日は、徒歩で登校するのが日課になっていた。  地域の遺跡や歴史を調査し、まとめながら発表するのが趣味だった。祭りの日、普段は公開されない寺社の奥ノ院が開く。  地元の生徒たち曰く、奥ノ院は洞窟の中にあって、洞窟は、全部、海に続くが迷路だと言っていた。  地元の肝試しで、決められた範囲の洞窟内を、設置されたゴールに向かって、各チームで競い合うものがあり、参加した生徒が幾人も居た。  参加した生徒に聞くと、本当の奥ノ院は、洞窟が海に抜け出る直前にあって、壁に彫り込まれた寺社になっている。  祭りに行ってみたが、いつもは鉄柵で閉ざされている、神社の後ろの洞窟が開いているだけで、中に入ることはできなかった。  祭りの関係者だけが、奥ノ院までお参りする。
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