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御形に指摘されて、この痛みが何なのかやっと分かった。これは、呪いを察知した痛みだった。
「俺の黒井に何て事をする…。この呪いは返す」
俺に呪いが来ているのではない。呪いを察知した痛みだと、説明しようとしたが、既に御形が臨戦モードに入ってしまった。
呪いを返すというのは、術者との力比べになる。返せなければ、自分にかかってくるのだ。
「御形!」
俺は、偽でも霊能力者だ。呪いならば、自分で返す。ちなみに、昔、御形に呪いに近いものをかけられたことがあるが、それは消滅(成仏)させてやった。そういう、やりかたもある。
藁人形が見えてきた。涙を流しながら、洞窟の壁に藁人形を打ち込む女性。何故、男なの。何故、私がダメなの。どうして。有働なんて居なくなればいい。田中なんて、死んでしまえばいい。
「田中の奥さんか?」
御形は、呪いを返してしまった。妙に、御形、呪いには詳しい。
「まだ痛いか?」
岩場に腰を降ろし、御形が俺を抱えた。翼が在るままなので、顔を御形の胸にうずめる形となっていた。
「大分、和らいできた…」
正直まだ痛い。立ち上がる事も困難だった。目を開けているのも辛い。御形にしがみ付いて、やっと体勢を保てる状態だった。
「天使では、やっぱり呪いには弱いな…」
自分に向けられた呪いには強いのかもしれないが、他者に向けられている、人間の黒い心には弱い。
「弱っていると、正直、そそる」
御形がまじまじと言ってきた。これは、かなり非道ではないか。
「それに、暗闇だと、黒井の目がほんのり緑がかった金色に光っていて、すごく綺麗だ。翼、出しているせいかもな」
そそると言いつつ、あやすように背を撫ぜてくれた。温かい手が触れ、翼の緊張を解く。痛みは、どうにかなりそうだ。
「…黒井…すごく、可愛い。必死に捕まっていてくれて…」
御形の手が優しい。仕方がない、優しい心に救われるのが、天使なのだから。
御形の肩に手を回すと、自分から唇を近付けた。ほんのり触れるキス。御形が、俺からキスされた事が無かったので、目を丸くしていた。
「役得か?」
御形が、しっかりキスを返してきた。
第五章 風刑の島
洞窟に彫られた祭壇に到着すると、遠野を突き飛ばした相手は、田中の奥さんであることは、過去を見て分かった。
でも、過去を見ただけでは、遠野を突き飛ばしたという証拠は何も無い。
「本人に話を聞くか?」
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