第1章

33/64
前へ
/64ページ
次へ
 どう聞いたら良いのかは分からない。 「蓮に相談してみるかな…」  海に面した洞窟で、御形と二人で唸ってしまった。時計を見ると、二時になっていた。どうも腹が減っていた。 「蓮に相談するのも、何だかシャクに触るが、一旦帰って昼飯にしよう」  海辺を歩きながら、御形の家へのお土産は何にしようか店を覗いた。貝もいいかもしれないが、海藻も売っている。 「家に土産はいいよ…」  バイクで来ているので、かさばる物は購入できない。味見をして、干物の類を幾つか購入した。酒のつまみになるかもしれない。  蓮の居る家に戻ると、直哉と山上が既に昼飯を食べていた。 「あちこちから、あれこれ聞かれて散々だったよ…そっちは?」  ぐったりと直哉が疲れていた。 「概要は分かったよ」  山上旅館から、重箱を持たされていた。広げて食べているが、見た目も綺麗で味も良かった。  ここの所、よく重箱の弁当に出会う。 「直哉、バイクのヘルメットは、予備は持ってきてないよな」  帰りは、御形を乗せて帰ろうかと思ったが、ヘルメットを用意してなかった。 「それは、持ってきてないよ。今日、帰るか?」  直哉が、御形を見て納得する。御形の分のヘルメットを探していたのだ。 「山上旅館に泊まってよ。俺の親、迎えに来るし」  できることならば、帰りたい。結構、体力を使ってしまった。 「残っているのは、遠山の件だよな。田中の家に突然行っても会えないだろうし」  御形が、煮物を食べ続けていた。御形、結構、煮物が好きらしい。 「田中って、俺のクラスメートにも居たな」  まさか田中の子供か? 「家にグランドピアノがあって、海のすごく近くに住んでいる」  何だか、世間は狭い。  俺達は、この事件のあらましを、昼食を食べながら確認し合っていた。  まず有働の死体が消えたのは、田中が移動させて隠したからだ。田中が有働の死体を隠したのは、不審死での解剖が怖かったから。有働は、洞窟に入る前に田中に抱かれていた。別れ話のこじれで、田中は有働に乱暴もしていた。有働に怪我や打撲があった状態だったのならば、殺された?と犯人捜しになったかもしれないし、最後に会った人物、寝た相手探しにもなったかもしれない。田中は、必死で隠したかったのだろう。  遠山が見た般若は、田中の妻だった。田中の妻は、有働と夫の田中をひどく恨んでいた。藁人形で呪いをかけ、見た遠山を海に突き飛ばした。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加