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直哉、いいことに気が付く。
「有働が亡くなったと、妻は知っていた。願いが叶ったので、急に怖くなったのかもな、藁人形を始末しに行っていた」
行方不明の段階で、何故、有働が亡くなったと知っていたのか?
「…妻も、死体の片付けを手伝ったのだな…」
あの洞窟に一人で入るのは、きつい。ましてや、人を一人で運ぶのは容易ではない。
「そう、一緒に運んで、これでやっと平和になると呟いていた」
蓮の祖母の家に戻ると、今日、帰ると説明した。しかし、すっかり夜になってしまっているので、危険だからダメとの返事が返ってきた。
「それでは、俺が食事を造ります。直哉が風呂と布団担当。御形が、食卓の準備とおばあさんの看病。蓮は、いつも世話になっているので、休んでいてください」
俺は、案外、料理は好きだった。修業で、農家レストラン春日の厨房に立ってみて、結構性に合っていた。
「分担作業、開始!」
作業を分担し、開始した。蓮は、何があったかは察していたらしく、台所のイスに座り、今日のあらましを聞いてくれた。
「そうね、山上君はまずかったね」
連れて来るべきではなかった。
「山上君は、君たちの仲間になったつもりだった。帰る時もダダをこねて、残ると騒いで大変だった。又、引き籠らないように、説得はしたけどね」
又、蓮に迷惑をかけていたらしい。
「客とは、一定の距離を取らないといけないよ」
それは、今回で実感した。俺は、いつも依頼者に近寄り過ぎだ。
「黒井のやり方かもしれないけれど、チームのやり方ではないだろ?チームならば、チームのやり方を決めないと」
チームというのは、俺と直哉と御形だろうか。
「まあ、俺も玲二も、黒井にまた仲間が出来て安心したけどね」
蓮の祖母の家は古い民家で、堀り炬燵だった。練炭を入れて温めるタイプで、まず、この珍しい物体にひと騒動起きた。誰も、練炭を使った事が無かった。
次に、炬燵での夕食になったが、祖母が自分の料理も食べて欲しいと、起き上がってきた。寝ていていいと、皆で説得したが、全く聞き入れなかった。
魚料理を作ってもらい、結構、量の多い夕食となった。
「黒井、御形の家も、いつも、賑やかか?」
「賑やかだな。夕食は皆で食べるという決まりだし」
蓮が、笑って見ていた。
「笑顔があるということは、何よりも強い」
蓮が、しんみりと言う。俺も、そう思う。
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