第1章

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 布団を敷いたが、全員一緒とはいかず、二名ずつに分かれた。 「俺、蓮と一緒」  俺が、蓮の部屋に行こうとすると、御形が止めた。 「俺が、蓮のところに行く。直哉と、黒井のいつものコンビで寝ていろ」  御形、蓮と話をしてみたいのだろう。素直に従うことにした。  しかし、俺と直哉の組み合わせで大人しくしていろというのは無理だった。  夜になって周囲が静かになったせいか、波音が聞こえていた。部屋には、並べて布団が敷かれていたが、当然、布団には入っていない。 「直哉、田中はどうしている?」  昼、窓から見ていた少年が気になる。画像を共有するために、直哉の手に自分の手を乗せてみる。胡坐かいて座り、座禅をしているかのように目を閉じた。 「…真っ暗だ」  暗い部屋に、少年が立っていた、こちらの気配に気が付いたのか、笑ったように白い歯が浮かんだ。 『大丈夫。ちゃんと制裁できるよ。天使たちが心配しなくてもいい』  田中からのメッセージが聞こえてきた。天使たちとは?何か勘違いしている。少なくとも俺は、制裁なんて望んでいない。 「何か、嫌な感じがするな…」  直哉が、田中の家の中を千里眼で見ていた。グランドピアノの下で、倒れている女性。そして、少年が、家の外へと歩きだした。 「行くか?」  パジャマの代わりにジャージを着ていた。ジャージから着替えると、そっと玄関から靴を取ってくる。音がしないように窓を開けると、外に飛び出した。  御形に言えば、一緒に行くと言うだろう。でも、これは天使が呼ばれている。多分、霊能力者での活動ではない。  直哉と、バイクを押して遠ざかる。充分に離れるとエンジンを掛け、バイクで走り出した。  田中の家に到着すると、直哉が透視で家の中を見る。そこには、少年の姿は無かった。 「どこに居る?」  暗闇の中、直哉の目だけを頼りに探すと、崖の上に人影を見つけた。  柵も何も無い崖の上で、少年は、遠くを見ているようだった。  海には光は無く、闇になっていた。耳元には、絶えず強い風音と、波音だけが響く。 「田中?」  影に呼びかけてみたが、振り返りはしなかった。足場が悪く、海中電灯で照らしながら進む。 「やっと、天使がやってきた」  もしかして、天使とは俺達のことなのか。 「父も、母も、罪を背負っていながら、嘘ばかり付くんだ…」
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