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どうしても行ってみたかった、奥ノ院がどのようなものか知りたかった。
祭りは二晩夜通しで続くが、真夜中では交代で火を灯し続けるだけで、他は仮眠していた。ちょっとだけ、奥ノ院を見てこよう。真夜中に洞窟へと入った。
本当の闇の中では、海中電灯では頼りない。足元に何かがあったと思った瞬間、頭に衝撃が走る。
事故現場は、洞窟と分かったが、色々、不審な点が多い。
まずこの女性、祖母らしいが、何故五年経過した今、相談しているのだろうか。
「優一…」
女性は、消えた優一を探して、部屋中を歩いていた。
「霊になっているということは、亡くなっています」
蓮が、下を向いたまま告げる。女性は驚かなかった。
「分かっております。五年、連絡もありません。これで、生きて失踪していると言われた方が、辛かったかもしれません、だから、死亡でもいいのです」
孫ならば生きていて欲しいのではないか。何かあったのだ。
「死体はどこに在りますか?」
直哉が千里眼で場所を特定し、地図と大雑把だが住所を書いたメモを、蓮に渡した。蓮は、書かれている住所を見て、再び激しく動揺していた。
俺は、そっと直哉から住所を聞き出す。昔聞いた事がある、蓮の育った土地に近かった。
蓮が動揺して言葉が出ない、これでは、話が先に進まない。俺は、カーテンの後ろから、そっと中に入り込んだ。
「アルバイトの黒井です」
この際、占いを嘘にして信じて貰おう。
「後ろで、調査しています。占いですが、全てが生年月日や星座ではありません。統計論だったり、調査の積み重ねです」
蓮は、俺の姿を見て安心したのか、一気に疲れがきたようで、イスにどっぷりと腰かけた。
「孫は有働 優一(うどう ゆういち)中学教師。地元の祭りの日に、奥ノ院と呼ばれる洞窟の中で事故死したようです。ご遺体は今もそこに在るかと思われます」
直哉の地図を見る、地図からは洞窟の中なのかは分からない。
「ご遺体を探すのは、警察でも構いません。伺いたい事があります、何故五年経った今なのですか?」
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