第1章

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 泣き崩れている女性が、有働の母親だった。蓮も、占いの館の電気を付けた状態で話は聞いているが、場違いではあった。  占いの館には、本来、恋愛とか結婚とか、幸せな未来を夢見る相談場所であって、死体を探すのは探偵のほうがいいだろう。 「ここが探したとは口外しないでください。占いは根拠のない存在ですから。今回は、たまたま係っただけです」  礼金を持ってきたが、蓮は掛かった経費だけ受け取るとしていた。 「あの、受け取ってください。そして、あの、義母から聞きました、優一に会わせてください」  全く信じていないと言うように、全く喋る気配のない男性、多分有働の父親も居た。 「優一と話がしたい」 「もう帰るぞ。全く」  手を引かれて、女性が連れ出されそうになっていた。有働は成仏していなかった。 「蓮、どこに居る?」  灰を媒体に霊を実体化させる。 「父さん、母さん。ごめんなさい」  浮かび上がった有働は、両親に深く頭を下げていた。 「何のトリックだ?」  トリック結構だった。でも、有働が成仏するには、多分、親の許しが必要なのだろう。 「どうしても、祭りの最中に、奥の院が見たくて、洞窟に入り、多分、転びました。慌てていて、当時の状況はうまく記憶していません。でも、俺は、殺されたわけではありません」 「…男…の恋人なんて作ったのだそうだな」  蓮は分かったことを全て、伝えていたようだった。 「はい、受験生の担任になり、相談事が多く、迷い、自信がなくなり、日々、先輩教員に叱咤激励されていました、でも、元気出せと、あれこれ遊びに連れて行かれ、色々、教えられて。いつしか、かけがえのない人でした。俺は、幸せでした」  でも、別れようとしていた。 「彼女に子供が出来たと知って、俺は、先輩を卒業して、先に進むと決めました。でも、つまらない興味で命を落としてしまいました。全て自分のせいです、誰も恨んでもいません」  有働、子供が居たのか。でも、子供が出来たからこそ、田中の子供の事も考え、別れると決めたのかもしれない。 「…ただ一つ、子供の件を貴方たちに言い忘れていたことが心残りで、先に逝くことが辛かった」  有働が再び、深く頭を下げた。 「生んでくれてありがとうございました。育ててくれて、感謝しています。先に逝く親不孝をお許しください」  有働の体が、泡状の光になると、有働の両親が取りすがって泣いていた。
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