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「成仏できるように、なるべく、離れていてください」
蓮が、有働に何か言葉を掛けていた。俺は、実体化以上のことが出来ない。
「ありがとうございます」
最後に有働が、俺に笑いかけた。
「…私たちは、田中さんを責めません。今の優一で決めました。事故で終わりにします。それに、もしかしたら孫に会えるかもしれません。探してみます」
有働の父親が、どうしても受け取ってくれと、封筒を置いて去って行った。
「ダメだ、今日は仕事にならない」
蓮も疲れ果てていた。
「事故を起こさせた原因は、俺達にあったよ。その罪の意識は、一生、消えないな…」
蓮が、封筒を開けずに俺に渡してきた。
「典史、それは、3人で分けておけ。俺は、受け取れない」
蓮は、本日休業の札を出すと、さっさと店を閉めてしまった。
第七章 風刑の島3
夕食前に、御形の家に戻ってしまった。恐る恐る御形の部屋の前を通ると、御形も家に帰ってきていた。
どう考えても、俺が御形を怒らせている。もう、最初から謝るしかない。
制服から着替えると、御形の部屋をノックした。
「御形、入っていいか?」
「どうぞ」
御形、参考書を読んでいた。御形、真面目な面も多いと、同居して改めて知った。
いつもは、御形が俺の部屋に来ているので、未だに御形の部屋が珍しい。整理整頓されている、真面目な部屋。居心地が悪くて、やはり自分の部屋で話そうかと、席を立ちかけると、御形がお茶を入れてくれた。
「どうぞ」
「…どうも」
日本茶というところが、御形らしい。
「風邪はもう治った?」
「完治」
お茶を飲むと、体が温まる。しまった和んでいる場合ではなかった。
「ごめんなさい」
最初から、謝っておこう。
「その、ごめんなさいは、どれのかな?」
「海に飛び込んだところ、迎えに来てくださり、ありがとうございます」
御形の笑顔が消えていた。
「田中のキスって何だ?」
昨日の夜のあらましを、御形に説明する。そこで海に飛び込んだ後に、田中にキスされたことも正直に話した。
今日の、蓮の店での出来事も説明した。
「黒井、田中にキスさせたのか?」
キスをさせたという訳ではないが、海の中で田中の傍から離れるわけにもいかなかったのだ。
「…させたというより、避けられなかったというか」
「黒井…俺の恋人だという自覚あるか?」
自覚はある、と、思う。
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