第1章

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「まず、俺は霊能力者のマネージャーになると言ったのではない、黒井と直哉のマネージャーをすると言った。天使だ霊能力者の区別なんてしなくていい、全部、俺を通していい」  御形が両耳を抓んで、引っ張る。 「痛いです」 「そう伝えたつもりだったけど、この耳は、聞いていないのかな?」  母に叱られるより、怖いかもしれない。 「何回、黙って突っ走るつもりだ。俺は、黒井を見捨ててもいいのかな?」  俺は、やや考え込む。今まで、一人でやってきた、又、一人に戻るということか。 「そこで、どうして嫌だと即答してくれないかな…」  今度は、御形が頭をグリグリとグーで押す。 「すいません」  謝る、謝る。心に決めて、ひたすら謝る。でも、本気で拳でケンカをしたら、間違いなく俺の方が強い。小さいころから、ケンカばかりしてきたのだ。  しかも、幼馴染の宗像の父親が武道が大好きで、空手だ合気道だ、柔道だとやらされていた。同じく幼馴染の志島の親にも、釣りや喧嘩の仕方など、色々教えてもらった。 「…俺は、黒井が好きなんだよ。どうしょうもない」  御形が、正面から抱き付いてきた。受け止める形で、御形を支える。 「黒井が、他の奴とキスしたって聞くと、そいつを消したくなるよ…」  耳元で、御形が呟く。 「抱かせて、黒井…」  御形が、俺の肩を掴み、真正面から見据えてくる。真剣な御形の瞳に、俺のとまどう顔が映っているのだろうか。 「最後までしないから、黒井の全部に触れさせて」 「分かった」  迷ってなんていない。勢いよく服を脱ぐと、御形が固まっていた。 「潔いと言うか…」  御形を傷つけたくなかった。 「色気が無いと言うか…海に行った小学生みたいだと言うか」  俺に色気を求めてもムダかと思う。御形が頭を抱えていた。 「ごめん、最初に言うべきだった。俺が天使だからなのか」  廊下をパタポタと歩く音が聞こえた。 「典史ちゃん、居る?田中君って子が来ているわよ」  御形の母親が俺を呼ぶ。 「はい、今、行きます!」  俺は、御形と顔を見合わせる。 「…必ず邪魔が入るのだ」  俺は、仕方なく服を着た。女の子が相手の時はここまで酷くなかったが、御形になってからは続行不可能になる。 「急いではいないよ。でも、キスはさせて、黒井…」
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