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「まず、俺は霊能力者のマネージャーになると言ったのではない、黒井と直哉のマネージャーをすると言った。天使だ霊能力者の区別なんてしなくていい、全部、俺を通していい」
御形が両耳を抓んで、引っ張る。
「痛いです」
「そう伝えたつもりだったけど、この耳は、聞いていないのかな?」
母に叱られるより、怖いかもしれない。
「何回、黙って突っ走るつもりだ。俺は、黒井を見捨ててもいいのかな?」
俺は、やや考え込む。今まで、一人でやってきた、又、一人に戻るということか。
「そこで、どうして嫌だと即答してくれないかな…」
今度は、御形が頭をグリグリとグーで押す。
「すいません」
謝る、謝る。心に決めて、ひたすら謝る。でも、本気で拳でケンカをしたら、間違いなく俺の方が強い。小さいころから、ケンカばかりしてきたのだ。
しかも、幼馴染の宗像の父親が武道が大好きで、空手だ合気道だ、柔道だとやらされていた。同じく幼馴染の志島の親にも、釣りや喧嘩の仕方など、色々教えてもらった。
「…俺は、黒井が好きなんだよ。どうしょうもない」
御形が、正面から抱き付いてきた。受け止める形で、御形を支える。
「黒井が、他の奴とキスしたって聞くと、そいつを消したくなるよ…」
耳元で、御形が呟く。
「抱かせて、黒井…」
御形が、俺の肩を掴み、真正面から見据えてくる。真剣な御形の瞳に、俺のとまどう顔が映っているのだろうか。
「最後までしないから、黒井の全部に触れさせて」
「分かった」
迷ってなんていない。勢いよく服を脱ぐと、御形が固まっていた。
「潔いと言うか…」
御形を傷つけたくなかった。
「色気が無いと言うか…海に行った小学生みたいだと言うか」
俺に色気を求めてもムダかと思う。御形が頭を抱えていた。
「ごめん、最初に言うべきだった。俺が天使だからなのか」
廊下をパタポタと歩く音が聞こえた。
「典史ちゃん、居る?田中君って子が来ているわよ」
御形の母親が俺を呼ぶ。
「はい、今、行きます!」
俺は、御形と顔を見合わせる。
「…必ず邪魔が入るのだ」
俺は、仕方なく服を着た。女の子が相手の時はここまで酷くなかったが、御形になってからは続行不可能になる。
「急いではいないよ。でも、キスはさせて、黒井…」
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