第1章

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 俺の目論見、海で翼を広げてしまったせいで、翼に波がかかってしまったのだ。 「ごめん、御形。翼、洗うのを手伝って」  シャンプーで洗いたいが、油分が取れてしまうのだ。ぬるま湯で丁寧に洗うしかない。  洗うのが終わったら、1枚1枚の羽に油分を与える。いつも、直哉が、油脂を入手してきてくれた。直哉に、どこから購入したのかと聞いても答えてくれなかったが、恭輔がそっと教えてくれた。  直哉は恭輔と賭けを行い、直哉が勝った時は、天界の油脂を持ってきてやってくれと、頼むのだそうだ。 「いつもは、翼の手入れは、直哉が手伝うのか?」 「自分でどうにかしているけどさ、見かねて直哉が手伝う時もある」  御形が翼をマッサージもしてくれる。それは、とても気持ち良かった。 「黒井、自分がもの凄くきれいな容姿をしているって気付いているのか?無防備すぎ」  きれいとは誰のことだ。 「俺は天使の時の記憶が戻っている。天使の時は一般的容姿だったよ。ただ、ちょっと、トラブルが多くて、地上任務に逃げてきたけどね」  翼も塩気が抜けてきた、塩気があるとどうも痒いというかちくちくしていた。  俺は、今は、天使の記憶よりも、黒井典史としての意識の方が強い。 「直哉も、その時からの知り合いか?」 「そうだよ。幼馴染。今も前も一緒に育った。ちなみに翼が在る、無いもその時からで、天使も翼がある方が、今はレアだな。翼が無くても飛べるから、邪魔だし。そもそも、翼が在る無しで能力の差はないから」  何故、地上に来たのかは、今は御形には喋れない。間違っても、人間を助けに来たのではない。俺は、俺の問題でここに居る。 「うらやましいな、雑賀が…」  直哉が聞いたら、うらやましいなんて違うと激怒するだろう。結構、俺は、直哉に迷惑ばかりをかけている。 「よし!御形、さっきの続きやるぞ!」  風呂から勢いよく上がると、パジャマに着替える。 「やっぱり、色気は無いのね…」  翼がすっきりして、気分も爽快になった。あとは、御形の機嫌も直れば、問題なしだ。  廊下を歩いていると、見たことのある女性がゆっくりと頭を上げた。 「山上旅館の女将?」  夕食時間に申し訳ないと言いつつ、息子が帰って来ないと泣いていた。今日の朝、学校に行くと言って家を出たが、学校へは行かず、どこかに消えてしまったそうだ。俺の母のところへ相談しに行くと、御形の家を教えられたらしい。
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