第1章

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 滅びるといっても、国があって滅ぶとかそういうのではない、減少して消えてゆくという意味だった。 「まあね」  直哉が、隣のベッドで本を読んでいた。 「典史は、翼持ちの中でも、とりわけ、光が強くてきれいだったから、傍に置きたいと、奪い合いだったよな。でも、俺がいつも勝ち取っていた」  直哉、御形に言うのはまずいような。 「幼馴染だったし、中身がやんちゃで手が付けられないってことも承知していたしな。それに何より、典史が俺を選んだし」  御形が翼を掴んでいた。 「御形、痛い」  直哉が、恐る恐る本から顔を上げた。 「親友という意味でだ。勘違いするな」  今の関係と、類似している。  御形、案外、嫉妬深いと分かった。 「御形、外で話そう」  寒いと言いつつ、庭を御形と二人で散歩した。相変わらず、庭の鯉は俺の後を付いてくる。 「黒井、キスしたい」 「どうぞ」  今更、確認されると照れる。誰も居ない事を確認すると、庭の木の影でキスをしていた。背に回された手が、躊躇なく服の中に滑り込む。胸をはだけられて、幾度も首に胸にキスが降りてきていた。 「…、やっぱり、外の方が邪魔が入らないのか?」  後ろ向きにされて、パジャマのズボンを降ろされて、前は隠れていたが、尻が出たというのが、何だかショックだった。 「かわいいな」  いや、尻を観察されているというのが、何だかショックだ。尻なんて、どちらかと言うと、見られても構わない場所だった。それなのに、今は、恥ずかしい。 「さてと」  御形に足を開かれそうになった、瞬間、 「お兄ちゃん、どこ?」  一穂の声が聞こえた。 「やっぱり、邪魔が入るか」  安心したような、残念がっているような御形の口調だった。  俺は正直、助かった。 第八章 年明けに  期末試験も無事終わり、もうすぐ冬休みという前日になって、御形が電車の中で、俺のスケジュールを聞いてきた。  電車の中は、通学の学生で混雑していた。日が落ちるのは早く、もう夕日が沈む。 「二十九日まで、農家レストラン春日で、お節料理を造るバイトがあって、その後、三日まで、宗像旅館の親戚で、スキー場の近くで民宿しているところがあるから、年末年始はそこでバイトがてらスキーしている。もちろん全員で勉強会もするけどね。直哉も同じスケジュールにすると言っていたよ」
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