第1章

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 御形、俺が、冬休み中も御形の家に居ると思っていたらしい。年末年始は、家族で過ごさせてあげたいと、俺と直哉は先に相談して決めていた。 「全員って、どんなメンバー?」 「俺と、直哉と、宗像と志島」  御形はメンバーに自分が入っていなかった事に、すごいショックを受けていたようだ。人前では崩さない御形の笑顔が、瞬時止まっていた。  宗像と志島は、俺の幼馴染だ。 「一緒に、除夜の鐘を聞いて、初詣したかった…」  御形、自分の家に初詣客が来るだろう。その相手をしなくていいのか。 「それに、宗像と志島も、黒井のことが好きだぞ」 「ああ、俺も好きだよ」  そういう意味じゃないと、御形が唸るが、これ、電車の中だぞ。 「大学は、俺、宗像と志島と一緒もいいかなって思うんだ。又、一緒にツルみたい」 「それ、俺には相談していないよね?」   御形は家のことがあるので、気軽に進学はどこがいいとかは聞けなかった。  電車から降りても、御形が絡んできていた。  御形の母親にスケジュールを伝えると、御形と同じく、俺達がずっと家に居るものだと考えていたらしく、寂しいを連発していた。 「農家レストラン春日で、俺がおせちを造るのですが、いつものお礼に、一個御形の家で食べて頂けませんか?」  御形の家は来客が多い、おせちが幾つあっても大丈夫だろう。 「春日のおせちは人気で、毎年、抽選なのよ。いいの?頂いて」 「はい」  喜んで貰えると、とても嬉しい。  休みに入ると直ぐに、農家レストラン春日へと通う。蓮も占いの館を休みにして、レストランの手伝いをする。  農家レストラン春日のおせちは、野菜中心となる。おせちのために栽培された野菜は、冬だというのに豊富だった。他に、乾燥させたり、付け込んで保存されていた野菜も使用する。基本、非常食のように長持ちするが、春日式は、健康第一で考え込まれている。  食べることで健康になるが、コンセプトだった。  ひたすら料理を造り続け、最終日に一気に詰め込み。各家庭に届ける。皆が幸せになるように、願いが籠ったものだ。  バイト料金を貰い、かつ、おせちを片手に御形の家に戻ると、何故か一穂が玄関に座っていた。 「暫く、典史兄ちゃんにも、直哉兄ちゃんにも会えないのだよね?」  泣かれるのには弱い。 「直ぐに帰ってくるよ」  正月が開けたら帰ってくる。 「スキーって楽しいの?」 「俺、スノボー派…」
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