109人が本棚に入れています
本棚に追加
御形、俺が、冬休み中も御形の家に居ると思っていたらしい。年末年始は、家族で過ごさせてあげたいと、俺と直哉は先に相談して決めていた。
「全員って、どんなメンバー?」
「俺と、直哉と、宗像と志島」
御形はメンバーに自分が入っていなかった事に、すごいショックを受けていたようだ。人前では崩さない御形の笑顔が、瞬時止まっていた。
宗像と志島は、俺の幼馴染だ。
「一緒に、除夜の鐘を聞いて、初詣したかった…」
御形、自分の家に初詣客が来るだろう。その相手をしなくていいのか。
「それに、宗像と志島も、黒井のことが好きだぞ」
「ああ、俺も好きだよ」
そういう意味じゃないと、御形が唸るが、これ、電車の中だぞ。
「大学は、俺、宗像と志島と一緒もいいかなって思うんだ。又、一緒にツルみたい」
「それ、俺には相談していないよね?」
御形は家のことがあるので、気軽に進学はどこがいいとかは聞けなかった。
電車から降りても、御形が絡んできていた。
御形の母親にスケジュールを伝えると、御形と同じく、俺達がずっと家に居るものだと考えていたらしく、寂しいを連発していた。
「農家レストラン春日で、俺がおせちを造るのですが、いつものお礼に、一個御形の家で食べて頂けませんか?」
御形の家は来客が多い、おせちが幾つあっても大丈夫だろう。
「春日のおせちは人気で、毎年、抽選なのよ。いいの?頂いて」
「はい」
喜んで貰えると、とても嬉しい。
休みに入ると直ぐに、農家レストラン春日へと通う。蓮も占いの館を休みにして、レストランの手伝いをする。
農家レストラン春日のおせちは、野菜中心となる。おせちのために栽培された野菜は、冬だというのに豊富だった。他に、乾燥させたり、付け込んで保存されていた野菜も使用する。基本、非常食のように長持ちするが、春日式は、健康第一で考え込まれている。
食べることで健康になるが、コンセプトだった。
ひたすら料理を造り続け、最終日に一気に詰め込み。各家庭に届ける。皆が幸せになるように、願いが籠ったものだ。
バイト料金を貰い、かつ、おせちを片手に御形の家に戻ると、何故か一穂が玄関に座っていた。
「暫く、典史兄ちゃんにも、直哉兄ちゃんにも会えないのだよね?」
泣かれるのには弱い。
「直ぐに帰ってくるよ」
正月が開けたら帰ってくる。
「スキーって楽しいの?」
「俺、スノボー派…」
最初のコメントを投稿しよう!