第1章

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 それが聞きたいわけではないよね。 「家族の邪魔はしたくないの。俺の家も、年末年始は挨拶に来る人で一杯でね。家族団らんなんて全くなし。姉が跡取りで、俺の居場所もないしね。昔から年末年始は幼馴染と過ごしていた。だから思うよ、温かい家族はいいよね」  宗像も旅館なので、年末年始は家が忙しかった。志島は、余り言わないが、ずっと付き合って一緒に居た。  一穂に、宗像と志島と過ごした日々を少し説明する。志島は、無口だが頼りにできる男で、家は林業だった。志島の家は他に建設会社も経営していて、家には寮も併設されていた。  志島は二男なので、両親からも家からも比較的自由だが、その分、何でも自分で決めて自分でしなくてはいけなかった。俺達は、何でも話して相談しながら育ってきた。  かけがえのない友達で、家族よりも大切に思えた。だから、正月も盆も一緒に居るのが当たり前のようだった。 「大切だから、一緒に居たいのだね。ボク、いつも一緒に住んでいるのだから、少し我慢しないといけないのだね」  一穂、理解してくれた。 「そうだね、俺は、宗像と志島も、すごく大切」  それと、どうしょうもなく分かっていた。生まれた場所が近く、同じ年に生まれたこと。彼らは、天使である俺の守護者だ。地上で力が使えない天使を、愛し守ると決められていた者。天使にとっては、両腕と等しく、自分と同じくらい大切な存在。でも、決められていたから出会ったのではないと思いたい、俺達は魂が近かったのだ。  いつか、これも、御形にも説明しなくてはいけないのだろう。まだ、どう説明していいのか分からない。  直哉にも、そういう存在が居るはずなのだが、改めて聞いたことがなかった。  直哉が丁度、玄関に入ってきた。 「直哉」 「話は聞こえた、宗像と志島が大切ときたら、俺の二人が誰か?が、聞きたいことだろ、一人は恭輔、もう一人が、どうも分からないのだけど、もしかしたら御形かもしれない」  一穂と手を繋ぎながら、直哉と奥へと進む。自分の部屋に到着すると、一穂も付いてきてしまった。  実家から俺と直哉の荷物は、民宿に送っていた。バイトの合間に、スノボー三昧できる。 「御形?」 「ああ、俺こっちで生まれているし、恭輔も御形は一目で信頼していた節があるしな」
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