第1章

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 友達になろうと言った、初めは楽しかった。だが、次第にエスカレートしていった。他の奴と喋るな、黙ってどこかに行くな。呼んだら、直ぐに来い。俺達は逃げようとして捕まり、怒りのままに檻に入れられた。部屋の天井に吊るされ、鳥籠の鳥のように扱われていた。  見かねた他の天使が、任務だと言って、地上に逃がしてくれたのだ。  また、捕まりたくない。  嫌な思いを抱えつつも、宗像の家に向かうと、民宿まで車で送ってもらった。  民宿では、俺は厨房と食事を運び、直哉は布団の上げ下ろしを行う。仕事の合間に、滑り放題で、リフトは民宿の従業員パスのようなものがあった。 「あの子ら、かっこいいうえに上手い」   志島も宗像も、運動神経抜群だった。しかも、上背がある。噂になるのも無理はない。 「こっち、天使みたいに可愛いうえに、滑りはメチャクチャかっこいい、しかも、無謀で男前」  誰の事だ。無茶するなと、宗像と志島のどちらかが、俺に付いてくる。直哉は、無難に上手く、器用に滑っていた。 「黒井…死神のボード。様になり過ぎ…」  ほぼ直角でも滑り降りる。 「付いて行くと死ぬよ…」  宗像、でも付いてくる。早朝、深夜、客が空いた時間にはとにかく滑る。  夜は四人が同室で眠っていた。体はクタクタに疲れていたが、時々は深夜まで喋ったりもした。俺は、宗像と志島が居ると、どちらかと言うと安心する。俺は、すごく眠くなるのだが、二人は違うようで、目が冴えて頭の回転が速くなるのだそう。でも、俺のどこかに触れると、安心して眠くなるらしい。  目が覚めると、志島が手を握っていたり、宗像が腕枕していたりした。一回は、俺が志島の上で眠っていて、宗像に怒られた。志島は俺を起こしたくなくて、寝坊したのだそうだ。 「本当に仲がいいな」  直哉は、冷静に観察する。でも、直哉と恭輔もよく一緒に眠っていた。  三日になると、帰るのが惜しくもなっていた。 「又、来てね。毎年、楽しみにしているからね。本当、毎年皆、いい男になってくるし」  民宿から、沢山の見送りをされながら帰途へと付いた。民宿のバイトの間、宗像と志島と、今までのことを沢山話し、進む大学の情報も交換した。  土産を持って、御形の家に帰ると、玄関で御形が待っていた。 「初詣、行こう」  初詣と言っても、御形の寺だった。 「黒井、今年もよろしく」 「こちらこそ、今年も世話になります」
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