第1章

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「風呂出たら、説明する」  御形がむくれていた。この御形、周囲の学校にまでファンクラブがある二枚目で、学校のアイドル的存在だった。しかし、一緒に住んでいて分かる事は、突っ走り型の、俺や直哉をサポートする有能さはあるが、それより、結構独占欲が強いことが目立つ。  俺も、最近は直哉も、御形の家のものという概念が強い。しかも、者ならまだいいが、どちらかと言うと、物的な扱いが気になる。 「…風呂出よう」  御形に手を引かれて、風呂から出ると、パジャマを着こむ。部屋に戻ると、御形が中央にどっしりと構えていた。  俺は、蓮の動揺ぶりと、行方不明の件が気になり、土曜日に蓮の説明を聞くと、概要を御形に告げた。 「それだけか?又、誰かに惚れたりしていないだろうな?」 「…していません」  直哉に冷めた目で見られていた。 「夫婦喧嘩ならば、別の場所でお願いします」  夫婦という訳ではないが、俺と御形は恋人同士ということになっている。  御形は頭のいい、いい奴だ。それは分かっている、キスされても嫌ではない、すごく大切な奴で、怪我させたくないし、悲しませたくない。だから、好きだという自分の気持ちは否定しない。だけど、それ以上の事は考えていない。これが、恋で合っているのかと聞きたいが、誰に確認でいるものでもない。 「俺も、蓮の話を聞く」  御形、どこか頑固で言い出すと、引き下がらない。 「それでは…土曜日ね」    土曜日の午後、蓮は有名店のケーキを大量に持ってやってきた。蓮の今の彼女が、ケーキ店でバイトをしているのだそうだ。歩合制があり、買わされてしまったと言い訳していたが、クリスマスケーキではないので、歩合制は嘘だろう。  多分、御形の家に喜んで欲しかっただけだ。蓮も占い師でもあり、口が達者のように見えて、結構不器用だった。 「後で、紅茶をお持ちするわね」  御形の母親、ケーキの中でも、普通のイチゴショートが大好物だ。笑顔を見ると、気に入っているメーカーのものだ。 「…良かった」  蓮も、俺も、御形の母親には救われる。  蓮を俺の部屋に案内すると、既に御形が待ち構えていた。直哉はサッカーの練習で居ないが、後で俺が説明する約束だった。 「まず、洞窟の説明をするかな」  蓮は、紙を用意すると、木の根のようなものを書き出した。途中、家のような図や、寺のマークが書き足された。 「話すと長いけど…」
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