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和都『サンブルース』
この都市国家は帝都マグナ・リードから遠く離れた辺境に位置し、この都市は七つある都市国家の中では比較的治安も良くて綺麗な都市だ。
しかし、それでも犯罪は起こり、悪の組織は存在する。
そして、ここはサンブルースのとある建物の深い地下。
消毒液の匂いが漂う真っ暗な部屋の真ん中に、手術灯によって照らされた手術台が置かれていた。
その上には黒髪の短髪で体型は太っても痩せてもなく、身長も高くもなくて低くもなく、いわゆる中肉中背の青年が手足を縛られ横たわっている。
青年の姿は手術の際に着る緑色の術衣を着ており、まるで死んだように眠っていたがゆっくりと目を開けた。
「うぅ……あれ?俺はいつの間に眠って……ここは?」
目が覚めた青年は覚醒しきれていない意識のまま、立ち上がろうとするが手足は固く縛られ起き上がることが出来ない。
「…は!?なんで俺、縛られてるの!?ちょ!?どういう状況!!?」
縛られている状況に気づいた青年は寝ぼけていた目を大きく見開いて現状を確認する。
普段の目にもどったその目は鋭く多くの人は彼を見たら不良だと思うだろう。
しかし、彼は不良ではなく普通の学生である。
そのことを彼はコンプレックスに思っていた。
青年は拘束から脱け出そうともがくが脱け出すことができない。
「おや?気が付いたのかい?」
突然、暗闇から白衣を着た金色の長い髪を後ろに束ねた女性がなにか書きながら歩いてきていた。その目は真紅の瞳で見る者を惹き付けるだろう。顔も整っていて、スタイルも良く美人なのだが、寝不足による目の下にある深い隈や肌の荒れのせいで勿体無いほど台無しになっている残念な女性だった。
「よかった。人がいた…すみません!!この拘束を外してもらえますか?」
この部屋に誰もいないと思っていた青年はホッとし、その女性に助けを求めた。
自分自身が縛られている状況の中で動ける人間がいる…
それはその人間が彼を縛った張本人の可能性があるのだが、覚醒しきれていない意識の中、動けない状況でテンパってしまった彼にとってそんなことを考えることは到底、無理な話である。
「手も足も動く…眼球も動くし元気もいい…クックックッ…私の実験は今日も完璧だ…」
「あのぉ?ちょっと?」
女性は青年の呼びかけを完全に無視し、青年の体を異常が無いか調べ、持っていたボードにチェックしていく。
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