「とある正義ととある悪の物語」

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 ここは皇帝が治める帝都アルバ・リード  その一角にある商業区には空を貫くほど高いビルが立ち並び、人々が寝静まる深夜でも働く人々による喧騒が絶えることはなかった。  そのビルが立ち並ぶ摩天楼の一角にエルジュ宝石店がある。 エルジュ宝石店は小さな宝石店だが、 七つある各都市の宝石を取り扱っており、そのことを自慢にしていた。  店は九時には閉店し、中は暗闇と沈黙に包まれる。 そんな店の裏を走る二つの影。 「ここがエルジュ宝石店だな。」 「そうです兄貴!!ここには高値で売れる宝石がたくさんありまっせ!!」  二人はまるで映画の中から出てきた強盗のような姿をしており、黒い目出し帽を被って厚手のジャンバーを着込んでいた。 小柄の男は大きい袋を持ち、大柄な男はなぜかハンマーを持っている。 どうやら、この二人は宝石店泥棒をするつもりのようだ。 もちろん、宝石店も馬鹿ではない。セキリュティも万全にし、アリっ子一匹の侵入も許さない。 「いくぞ?…性質追加ぁ!!!!ザ・ハンマーァァ!!」 相手が能力者でなければ、の話だが… 兄貴と呼ばれた男は持っていたハンマーを構え、 レンガ造りで作られた宝石店の堅固な壁にハンマーを打ち付ける。 その瞬間、大きな爆砕音と共に堅固なはずの壁は粉々に砕け、洞窟の入口のような大穴が出来上がっていた。 辺りには土埃が立ち込もり、けたたましく警報が暗闇に鳴り響く。 「さすが兄貴の能力…相変わらず凄まじいですね…」 「のんびりしてないで早くしろ!!”奴ら”が来るぞ!!」 「りょ、了解しやした!!兄貴!!!」  二人は何かを恐れているのか手早く宝石を袋に詰め込むと、あらかじめ用意していた車に乗り込み、猛スピードで走り出した。
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