プロローグ

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もうあの日の二人には二度と戻れない現実を悟らせるように、余韻もないままに彼は私から引き抜いた。 「ピル飲んでるにしても眠る前に洗っておけ」 起き上がりながら冷たく言葉を放った彼は私に毛布を被せるとバスルームに入って行った。 パタリと閉じられた扉を見つめながらとめどなく涙がこぼれ落ちる。 どうしてこんな風になってしまったんだろう。 この想いを伝えることなんてきっと許されない。 彼にとっての私は…壊したくてたまらない人形でしかないのだから。 それでも…彼がこうして私を抱いてくれるなら…。 私の中に全てを注ぎ込んでくれるなら。 私は地獄までだって堕ちてもかまわない───。
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