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救われぬ日差し
「貴方の願いは叶えられない。そう申し上げた筈ですけど?」
半透明の幼女は、開口一番そんなことを宣った。
身長は小学校中学年程度なのに、俺と視線を合わせられているのは彼女が「浮いて」いるからだ。
指先でくるくると弄ぶのは五円玉。
しげしげとそれを眺めた少女は、俺に本気で害意がないということをたっぷり一分半の吟味の末、やっとのことで理解してくれたようだった。
それもそうか。
何日か前に、彼女の住処にシャープペンを突き立てた物騒な学生が今度は鎌なんぞ持って現れた日には、命の危険くらい感じてもいい頃合いだ。
本当なら、長柄の草削りの方が効率はいいのかもしれないが、脚が長い植生で根から削るよりは、まず歩きやすいように揃えるのが適切だとも思えた。
……当然。目の前の少女が万能だなんて考えていない。そも、彼女の名前を俺は知らないのだ。
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