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「んぐっ!」
春樹は、それを反射的に飲み込む
ゆっくりと離れるコウの唇を、回らない頭と虚ろな目で見つめた。
「ハァハァ…」
生理的に、乱れだ息を整えようとする。
「ん…コウ?
俺、食べられる?
怖い…」
ようやく回りだした頭だったが
恐怖がよみがえり
春樹は、恐怖から泣き出してしまう。
「ハルキ?
何故、泣くのだ?
私は、ただお前が噛みきれないから、肉を噛みきってやっただけで…」
そんな春樹の様子に驚いたのは、コウだった。
指で春樹の涙を拭ってやる。
「ふえっ、肉?
俺の事、食べるんじゃ…」
眉を寄せ、聞き返す春樹
そう言えば、口内に肉の味が広がっている気がする。
「まだそんな事を言っているのか?
私は、人間は食さない主義だ。
肉が不味い…
特に男等、食えた味ではない
いや
ハルキなら極上な味がしそうでは有るが…
貴様は、可愛すぎて勿体無い」
そう言い切ると
コウは、何故か春樹から顔を背けた。
「コウ?」
春樹には、よく話が解らない。
可愛いとは、誰の事だろう?
まさか俺?
可愛げが無さすぎるとは、子供の頃から言われた気がするが…
聞き間違いかな?
春樹は、ボーっと
コウを眺めた。
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