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「いい悲鳴だね。
良いなぁ、恐怖に歪んだ顔
堪らないよ。
王が入れ込むのも解る。
人間にしては、良い匂だしね」
クスクスと笑い
腰を抜かした春樹に合わせる様に、膝を曲げる得体の知れない化け物
「アウアウ、俺…貴方を救う事は出来ません
見えるけど…それだけで…」
完璧に幽霊だと思い込んでいる春樹は、テレビで聞いた『幽霊には、貴方を救う事は出来ないと、ハッキリ言いましょう』的な胡散臭い台詞を思いだし
声を振るわせつつ、何とか声を絞り出す。
「お前さぁ、目障りなんだよ。
王の子供を孕むのは、俺様って生まれた時から決まって…」
「おい、貴様なにしてる!
さっさと私のハルキから離れろ
でなければ、今直ぐこの御粗末な首を切り落としてくれるぞ」
幽霊の声を遮った冷酷な声は、春樹ではなくて
いつの間にか戻って来ていたコウが、幽霊の喉に長い己の爪を押し付けていた。
幽霊の首筋が軽く切れ、赤い血が伝った。
いや、切れたと言うことは
幽霊ではないのか
しかし春樹は、コウに気を取られ
そんな事には気付かない
「コウ!」
「王!」
春樹と化け物の声が被る。
「誰が貴様なんかに私の子種をくれてやるものか
さっさと消えろ!」
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