絶食

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春樹の唇からは、吐息も漏れず ただ、コウの唾液のクチュクチュと言う音しかしなかった。 長い口付けを何度かに分けて与えると、次第に春樹の顔色も正常に近づく もう大丈夫だろうと、口付けをやめ 春樹の顔を見つめるコウ まさか、自分が籠っていた四日間 まるまる飲まず食わずでいたのか… 「コウ…」 やっと微かだが声を出せた春樹は、瞳に涙を浮かべコウにしがみつく 「馬鹿者め! 一体、何を考えていたのだ!!」 コウは、緊張と不安が解け 直ぐ様、春樹を怒った。 寿命が千年ほど短くなったかも知れない それは、良いのだが 「コウの事…考えてました」 そう言って、微かに笑う春樹 そんな春樹に、コウはドキッとした。 そして、その美しくも有る顔を暫し見つめ やっと口を開く。 「私も、ずっとお前の事を考えていた。 ああは、言ったものの 本当にお前が出ていってしまったらと思ったら…」 そう言い、言葉を詰まらせるコウ 眉を寄せるコウの瞳からは、ポツッポツッと落ちるモノが それは、春樹の顔を濡らした。 「コウ…」 コウが泣いている。 春樹は、必死で指を伸ばし コウの瞳からソレを拭った。 しかし それは、止まってはくれないようだ。
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