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「だめだめ、円には嫉妬深い彼氏がいるから」
知らない内にふたつのクレープを受け取っていた龍也が話に入ってきた。
「クレープもらったから、行こ?」
「うん。じゃあね、クレープ頑張ってね」
1年生の子に手を振って、ふたりはその場を離れた。
「はい、円ちゃんの分」
バナナチョコクレープを手渡す龍也。
「ありがとう」
「新太たちどこにいんのかな」
「電話してみる?」
円が携帯を取り出し、新太に電話をかけた。
「…出ない。気づかないかな」
人で溢れ、騒がしい学校。着信音は聞こえづらいのかもしれない。
「屋上行かない?」
「え?」
「屋上は何にも出し物してないし、屋上でまた電話しようよ」
「うん、そうだね」
中庭から校舎の中に入り、屋上に向かった。どの階も盛り上がっているが、屋上の前までくると静かになる。
屋上に入ると、風が吹いてくる。
「懐かしいね」
いつも座っていた屋上の隅に移動すると、ひとりの女の子が座り込んでいた。
「っ、ひっく」
微かに聞こえる泣き声。心配そうに見つめる円と対照的に嫌悪感丸出しの龍也。
「円ちゃん、場所変えよ」
「でも…、」
「ひとりになりたくてここ来たんでしょ。ほっといてあげようよ」
半ば無理矢理円の手を引いて、屋上を出た。
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