第1章

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「だめだめ、円には嫉妬深い彼氏がいるから」 知らない内にふたつのクレープを受け取っていた龍也が話に入ってきた。 「クレープもらったから、行こ?」 「うん。じゃあね、クレープ頑張ってね」 1年生の子に手を振って、ふたりはその場を離れた。 「はい、円ちゃんの分」 バナナチョコクレープを手渡す龍也。 「ありがとう」 「新太たちどこにいんのかな」 「電話してみる?」 円が携帯を取り出し、新太に電話をかけた。 「…出ない。気づかないかな」 人で溢れ、騒がしい学校。着信音は聞こえづらいのかもしれない。 「屋上行かない?」 「え?」 「屋上は何にも出し物してないし、屋上でまた電話しようよ」 「うん、そうだね」 中庭から校舎の中に入り、屋上に向かった。どの階も盛り上がっているが、屋上の前までくると静かになる。 屋上に入ると、風が吹いてくる。 「懐かしいね」 いつも座っていた屋上の隅に移動すると、ひとりの女の子が座り込んでいた。 「っ、ひっく」 微かに聞こえる泣き声。心配そうに見つめる円と対照的に嫌悪感丸出しの龍也。 「円ちゃん、場所変えよ」 「でも…、」 「ひとりになりたくてここ来たんでしょ。ほっといてあげようよ」 半ば無理矢理円の手を引いて、屋上を出た。
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