1人が本棚に入れています
本棚に追加
「家出したんでしょ?おいしいご飯食べさせてあげるよ」
「っ、そんなんじゃありません!離してくださいっ」
めんどくさい、
龍也の頭にはその一言しか思い浮かばない。繁華街に制服で来れば、変な男に声を掛けられるなんて分かり切ったことだ。あの子は可哀想だが自分には関係ない。
龍也はそのまま通り過ぎようとしたが、女の子は男の手を振り解き、逃げたところにちょうど龍也がいてぶつかった。
「いって、」
「あ、ごめんなさい!」
「いいよ、別に」
ぶっきらぼうに返す龍也に彼女はとんでもないお願いをした。
「た、助けてくださいっ」
「は?」
彼女は龍也の背中に隠れ、腕を掴まれる。
「お兄ちゃん、その子わたしにくれるかな」
中年男は気持ち悪い笑みを浮かべながら龍也に近づいてくる。龍也の腕を掴む彼女の手が震えていた。
龍也は小さくため息をついて、呟いた。
「めんどくさ、」
龍也は彼女の手を掴み、歩いてきた方向に走り出した。
「あ、おい!」
後ろで男が叫ぶ声が聞こえたが、龍也は構わず走った。
「ここまでくれば、大丈夫か」
細い路地から人通りの多い通りまで逃げた。
「はあ、はあ、はあ」
龍也の隣で息を整えている彼女。
「すぐそこ駅だから。まっすぐ帰れよ」
龍也はそれだけ言い残し、再びコンビニに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!